
移り変わりの著しい時代をすこやかにしなやかに生き抜くために。バランスのとれた真のウェルネスへ誘うべく、マインドフルネスをはじめ、美容、養生、生き方など、今すぐに役立つTIPSを様々なアプローチでご紹介します。
早坂香須子さんが続ける 自尊心を取り戻すフェムテックケア
最近話題を集めるフェムテックとは、女性を意味する「female」と技術を意味する「technology」を掛け合わせた造語。女性特有の不調や心身のトラブルを、テクノロジーを使って改善し、生活の質を向上させようというものです。さまざまなケアを実践してきたというメイクアップアーティストの早坂香須子さんに、フェムテック製品に出会ったきっかけ、そして意識の変化について伺いました。
向き合った分だけ
身体は変わる
ーフェムテック、フェミニンケアとの出会いを教えてください。
もう10年以上前になりますが、植物療法士の森田敦子さんとの出会いが、私にとってのフェムテック、フェミニンケアのはじまりです。まだ“フェムテック”という言葉自体は存在しませんでしたが、フランス国立パリ13大学で植物薬理学やセクソロジー(性科学)を本格的に学んだ森田さんは、デリケートゾーンを中心とするセンシュアルケアの大切さを丁寧に教えてくれたんです。その頃の私は何だかイライラしたり、慢性的に疲労感を抱えていて、メイクアップアーティストとしてバリバリ仕事をしている自分と、一女性としては自信を持てない自分との乖離に悩んでいたのですが、森田さんのお話を伺うほどに、「もしかしたら女性ホルモンの影響もあるのかもしれない」と気づき、本格的に女性の身体について学んでみようと決意。森田さんが自ら教鞭をとるクラスに運良く参加することができたため、仕事終わりに駆けつけては必死にノートを取る、そんな日々を送りました。植物療法やセクソロジーからの学びは多く、受講する度に自分が生まれ変わっていくようなワクワクした気持ちを覚えています。
ー具体的にどのように変わったのでしょうか。
つまるところ、学んだのは“自分の身体と多角的に向き合う大切さ”。自分の身体を知ることで女性に生まれてきた喜びや豊かさをポジティブに受け取ることができるようになり、女性としての自尊心を取り戻すことにつながりました。たとえば、それまでは“更年期=女性として終わり”という先入観がありましたが、「死ぬまで一生女なんだ」ということを実感し、自分の心の支えになっていくような感覚をおぼえたことも。スクールで学んだことは実践編のつもりで日々取り入れていましたが、劇的に変化を感じることができたのは膣ケアでした。今でこそ、その大切さが広く知られるようになってきましたが、まだ専用ケアの重要性など説かれていなかった頃…最初は私も抵抗感がありましたが、悩んでいた目や肌の乾燥の原因にもなっていると知り、専用ソープで洗うことからスタートしました。徐々に段階を踏んで、膣の中を専用オイルで潤わせるケアが習慣化できるようになったとき、自分の身体が自ら潤えるように変わったのを実感しました。
それまでもスキンケアやボディケアは習慣にしていましたが、一歩進んで膣ケアを取り入れたことで、全身に潤う力が戻り、感受性も高まって、人に対する思いやりの気持ちも生まれてくるんです。受容体である肌が潤っていないと、感受性も弱まるし、受け取ったことも脳に届かないんですよね。心と身体は一体で、それぞれに呼応し合っているものだということを再確認しました。
自分を認めることが
社会を変える一歩にも
ー今は、さまざまなフェムテックケア、フェミニンケア製品が存在します。まず何から始めるのがおすすめですか?
自分のライフスタイルに合わせて、無理のない形で取り入れていくのがいいのではないかと思います。生理用品一つを取ってもここ数年で選択肢が増えたので、オーガニックコットンのものを選んでみたり、休日は布ナプキンに変えてみたりして、劇的ではなくとも自分の身体や心にどのような変化が生まれるのか、じっくり向き合ってみる中で、次なるステップが見えてくるのではないでしょうか。
誰しもなかなか万事快調というわけにはいかないものですが、年齢やホルモンバランスによる自分の身体の変化に目を向ける習慣を身につければ、不調の原因を分析できるようになって、自虐的に加齢のせいにしてみたり、自分を諦めないで済む。ひいては、そのままの自分を認めることができるのではないかと思います。
ーフェムテックのカテゴリーに今後期待することはありますか?
私が膣ケアと出会った時に思ったのは、「もっと早く知りたかった」ということ。性に芽生える10代、敏感になる20代、若いうちに自分の身体との向き合い方を知っていれば、もっと自分を大切にできたのではないかな、と思うんです。
残念ながらまだ女性が性についてオープンに話すことは少ないのですが、医学の話であり、悦びの話であり、動物としてとても大切なことだと思うので、もっと普通に話せるようになっていけたらと思っています。私のオンラインサロンではトライ中なので、気になる方にはぜひ参加して欲しいと思います。女性特有の悩みに向き合い、よりよい解決法を見いだそうとするフェムテックの流れは、女性の人生を豊かにするだけではなく、社会を良い方向へ変えていく力を秘めていると信じています。
早坂香須子/メイクアップアーティスト
看護師として大学病院に勤務後、メイクアシスタントを経て、1999年に独立。国内外のモデルや俳優から支持を集め、豊富な海外渡航経験により自然との共存、心身の健康を志す。2019年にはフランス植物療法普及医学協会認定ルボア・メディカルフィトセラピストの資格を取得。幅広い知識を生かし「NEROLILA Botanica」のブランドディレクターを務める。著書に『YOU ARE SO BEAUTIFUL』(カエルム)、『100%Beauty Note 早坂香須子の美容AtoZ』(KADOKAWA)。
Instagram @kazukovalentine
Text_ Yuko Homma
Editorial Direction_ Little Lights