
移り変わりの著しい時代をすこやかにしなやかに生き抜くために。バランスのとれた真のウェルネスへ誘うべく、マインドフルネスをはじめ、美容、養生、生き方など、今すぐに役立つTIPSを様々なアプローチでご紹介します。
フレグランスデザイナー Harunaさんが指南する 香りで叶えるウェルネス
香りは忙しい毎日の
名サポーター
好きな香りがあるだけで、ふさぎこんでいた気持ちが晴れやかになったり、心の奥底があたたかく満たされたりするもの。フレグランスデザイナーとして活躍するHarunaさんに、香りがもたらしたサプライズについて聞きました。
ーHarunaさんと香り、アロマテラピーの出会いを教えてください。
香りとの出会いは、コスメからでした。
大学卒業後に就職したインターネットの広告代理店で、最盛期の通販コスメを担当していたのですが、競合他社のリサーチを兼ねていろいろな化粧品を試すなかで出会ったのはオーガニックコスメだったんです。なんといっても驚いたのがその香りの素晴らしさ。特に配合成分がシンプルな、ワイルドで素朴さも残したブランドに惹かれたのですが、疲れてボロボロになっていた肌がみるみる立ち直って、強くなっていくことにも感動しました。その後、メーカーや商社に転職して、さらにハードワークに身を投じていた時期も、オーガニックコスメを拠り所として乗り越えてきた感じです。
とは言っても本当にごくごく一般的な楽しみ方をしていて、オーガニックコスメを通じて香りへの興味がわいてからも、「生活の木」や「ニールズヤード レメディーズ」に足を運んで、お気に入りの精油を少しずつ揃えることからスタート。自己流で好きなブレンドしてもいい香りが出来ないことから、アロマ検定等を受けて調香の知識を身につけたりもしましたが、あくまで自分のための趣味という感じでした。
ー“香り”をお仕事にしようという転機はどのように訪れたのですか?
香りは手軽に人を幸せにできるツールだと実感したことがきっかけでした。
長年、鎮痛剤が手放せないほど重い生理痛に悩まされていたのですが、精油を用いたケアを始めるようになって、徐々に症状が軽減してきたんですね。そういった“個人的実感”を身近な友人に話すと、興味を持ってくれることが多かったり、「薬を頼らずに済むようになったよ」などという嬉しい報告を受けるようになって、私が持っている知識は、もしかしたら誰かのために役立てることができるのでは?と思うようになりました。
ーストレスのない生活を送れたら理想ですが、現実はそうはいかないもの。香りや精油を味方に、ハードワークも乗り切ってきたHarunaさんのアドバイスだからこそ、周りの忙しい方々も「私もやってみよう!」という気持ちが湧いたのではないでしょうか。
そう言っていただけると報われますね(笑)。パーソナルアロマブレンドを生業に独立して5年目になりますが、企業の中でハードワークを経験してきたからこそ、お客様が置かれている状況がイメージできるのかな?と思うこともあります。
私自身、日常的に精油を使うようになって、自分の感情を上手にコントロールできるようになったのを実感しています。朝一に数種のアロマブレンドを嗅いで、今の自分にフィットする香りを決めることからスタートするのですが、コンディションを見極めるリトマス紙のようなもの。香りを通じて自分の中にある揺らぎに気づくことができるから、感情の浮き沈みにも一喜一憂しなくなりますし、結果的にパフォーマンスもあげられて、仕事面でのメリットも大きいんですよね。
テクノロジーが発達してさまざまなものがオートメーション化される中にあって、香りは人間のプリミティブな部分を刺激してくれるもの。自分の感覚を大事にする大切さを教えてくれるんです。忙しい現代人にこそ、香りは名サポーターであることを伝えていきたいと思っています。

香りは自分を知る
道しるべ
ー現在はパーソナルアロマブレンドとして、日々数多くのお客様とセッションを重ねてらっしゃいますが、求められる香りに傾向はあるのでしょうか?
Self Love Session (完全紹介制)では、約90分かけてじっくりセッションを行い、その方の“今”求める香りを完全オーダーメイドで作っています。セッション時には、とにかくご自身と向き合う時間になるように、好きな香りだけでなく、色や食べ物、生活スタイル、性格などさまざまな質問をし、約50種の精油からブラインドで気になる香りを選んでもらっています。コロナ禍でも数多くのセッションをさせていただきましたが、やはり自覚的であれ無意識のうちであれ、ストレスや漠然とした不安を軽減するような香りを求められる傾向がありました。リモートワークでずっと部屋に籠っていると気が滅入り、作業効率も下がりがちなので、瞬時に気持ちを切り替えてくれる香りはなくてはならない存在という方も多かったですね。香水の存在感のある香りと異なり、精油の香りは時間とともに消えていくというのもお籠りにマッチしたのかもしれません。
長い自粛期間を経た現在は、自分らしくいられる香りを求める方が増えてきています。私自身もそうですが、やはりこれからの生き方をじっくり考える時間になったのではないでしょうか。今まで香りというとリラックス、リフレッシュなどと分けられることが多かったですが、これからは「自分軸」というのも一つのキーワード、カテゴリーになっていく気がします。“自分が今求める香りを大切にする”というアロマテラピーの理念に、本能的に立ち返った感じがしますね。
ー目の前の一人に向けた香りと異なり、空間演出や広く一般に流通する香りはどのように作るのでしょうか?
昨年の「東京オリンピック」では、VIPを迎える空間の香りを依頼されたのですが、コロナ禍ということもあり、日本的な香りに衛生面をプラスした香りを提案しました。具体的には空間の演出、ハンドサニタイザー共にクロモジ、柚子などにティツリーをブレンドしましたね。
大手メーカーの商品の香りを監修する際には、とにかくカウンセリング、ヒアリングを重視。最大公約数の方にフィットする香りを見つけるのは、オーダーメイドの香り作りとはまた異なる難しさがあるものですが、個人では集められない量のデータに触れられることからの学びは大きく、Self Love Sessionの仕事にも活きています。
ー今後新たにチャレンジしたいことはありますか?
間もなく第一弾がリリースできる予定ですが、地方でオーガニック農法を営んでいる農家さんと組んで、コスメを作っています。例えば、レモンの新芽は摘まれたら廃棄されるだけなのですが、とても素晴らしい香りなんですね。そういった廃棄されてきたものの中にも素晴らしい原料がたくさんあるので、農家の方々と一緒に有効できる仕組みを考えて、新たな循環を生み出したいと思っています。
私は香りをきっかけに、自分の本質的な部分を受け入れられるようになり、生き方も心地よい方へとシフトすることができたので、これからはさまざまな形で恩返しができたらと思っています。
Haruna
株式会社Selenophile(セレノファイル)代表取締役 /フレグランスデザイナー。『わたしだけが知っているわたしの望む香り』をテーマに、オーガニック・野生種の精油・天然香料を使用して香りをデザインしている。パーソナルな香りの診断やコスメの香り監修、企業、イベント、ホテル、東京オリンピック2020の等の空間演出など幅広く活動中。
https://haluna.themedia.jp
Instagram @haruna.sema
Interview_ Yuko Homma
Editorial Direction_ Little Lights