ディレクター安部真理子が紐解く、デザインと着こなしのヴィジョナリー。地球環境や生産者への想い、ファッションへの情熱。心が踊り、触れる肌が喜ぶような装いへの願いとこだわりを、じっくりと綴ります。
ふんわりと包み込む優しさに、萌ゆ。極上カシミアジャージーは洗濯機でおうち洗いが新スタンダード
ここ最近の異常気象や自然災害がただ事ではないことは、EQUALAND愛用者なら察しがつくはず。気候危機をなくすために、私たちは市民レベルでそれぞれ小さな努力を続けている。楽観的にならず、しかし楽しみながらも生活と気候変動問題の改善に向けて動く気持ちはひとつだ。
お天気アプリを確認する癖がすっかり定着したのは、スマホのせいだけではないはずだ。気温が読めない日々、急な温度の変化、湿度の変動、屋内外の寒暖差。外気の変動に敏感な私たちの素肌に天然素材の柔軟性が心地よい。いつのまにか天然素材に手が伸びてしまうのは、自然の摂理としか言いようがない。
オーガニックの飼料ですくすくと育ったカシミア山羊の毛で作られたカシミアジャージーは、柔らかく素肌を包み込む。特別な手法で中に空洞を作ることで、自然の保温力を携えている。例えば落ち葉の堆肥がほんのりと暖かく自然の循環を促してくれるといったようなあたたかみ。すぐに電化製品に手を伸ばすのではなく、自然のサイクルや成り立ちを十分に生かして心地よさを調節する、という一手間に価値があり、魅力がある。
今シーズンは、ハイネックと、クルーネックの2種類。秋口は1枚でシンプルに着こなすのがクール。アクセサリーやボトムのアクセントが活きる、行き先を選ばないトップス。寒くなってきたらインナーとして使ってもよし、レイヤードも自在だ。何よりベーシックなものこそ、上質なものを大切に着たい。
誇り高き90%以上が天然染料のボタニカル・ダイ
私たちの挑戦は、いかに環境負荷をかけない仕組みを既存のライフスタイルの中で無理なく作り出していくか。化学染料がその土地の土壌や水質汚染に悪影響であることを懸念して、天然染料を90%以上使用した色落ちしにくくも色鮮やかなボタニカル・ダイは、私たちの誇り高き生産背景のひとつ。
今回、カシミアニットに今シーズン使用した染料は、ジンジャー(ホワイト)、ローゼル(ブラウン)、マルベリー(グリーン)、ログウッド(ブラック)の4つ。天然だから出せる深い色合いは、母なる大地が映し出す荘厳な自然に繋がっている。通常色止めで化学染料が欠かせないところ、90%の自然素材を誇るのにはそれなりの手間暇、そしてここに至るまでの研究の賜物だ。同時に、その情熱を形にして遠くの人々へ届けることができることは、喜びでもある。
ものが身近にありふれた今。深く考えなくても、少し足を伸ばせば大体のものが手に入る。食事ですら片手のボタン操作で届き、スマホ越しの印象だけで選んだ服が翌日届くことも珍しくない……そしてその便利さの裏側に、おびただしい数の被害や不正があることも。それではいけない、と真剣に思う人たちで社会は変えられる。良心とクリエイティブが合致し、その選択が当たり前になるように。サプライチェーンがクリーンであることを証明する信用タグは、安心して購入してもらうための私たちの誠意の証。努力と選択に誇りを持って、そして何よりも毎日のおしゃれやライフスタイルを楽しんでほしい。
安部真理子
EQUALAND TRUST & INTIMATE クリエイティブ・ディレクター
Editorial Direction_ Little Lights