
物を買う、発言する。そんな私たちの小さなアクションが社会を動かしていきます。まずは、身の回りや世界にはびこる社会問題に目を向け意識を変えることから。様々な執筆家を迎え、それぞれの気づきから考えを促します。
「地球温暖化と気候危機。私たちがとるべき行動を考える」気候アクティビスト荒尾日南子
グレタ・トゥーンベリが18年8月20日に始めた気候危機を訴える気候ストライキは、SNSの電波に乗って世界中に目を覚ますきっかけをくれた。気候危機は今まさに起きていて、早急に大胆な変革が必要だ。地球は実はかなり深刻な状況で、その変革は人任せにしていても改善しない。個人が始められる簡単な改革や学びと行動のステップを国際環境NGO 350 Japanの荒尾日南子さんに教えていただいた。
気候危機。温暖化。数年前に比べて、耳にすることがどんどん増えてきた。私が350 Japanで仕事を始めた3年前には、声を大きくして、「みなさーん、こんな問題がありますよ〜、気づいてくださーい。」って言っていたのが今では一変、テレビでも、新聞でもどんどん取り上げられるようになっている。
地球の平均気温は、今1.2℃ほど上昇していると言われている。これって、「気温」として考えると、一見小さな数字に見える。けれども、地球の平均気温は、私たちの体の平熱と少し似ている。36.5℃の平熱が、1.2℃上がって、寝ても覚めても37.7℃になったら、体調が、そして人生が、だいぶしんどいことになるのが予想できると思う。これが、今地球に起こってしまっていること、そして、とっても心配なところが、これが、今世紀末、今から80年後までに、このままだと2℃、そして3℃と上昇してしまいそうってところ。平熱が39.5℃になるような異常事態が地球に起き始めてしまっている。
1.2℃の上昇した現時点でも、すでに世界中で、台風の巨大化、頻発化、大規模で深刻な干ばつや山火事、海面上昇などが広がり続けている。たくさんの動植物種がすごいスピードで絶滅し、今後もその加速が予想されている。そして、温暖化がより深刻化した先には、気象災害だけでなく、それに関連した食糧生産量の減少に伴う食物価格の高騰や、経済、政治の不安定化、気候システムの不可逆的な崩壊のスイッチが入ったり、など、社会の変化を今以上に日々肌で感じる世界が待っていると予測される。
そこで、大事になってくるのがパリ協定。「パリ協定の1.5℃目標に整合する...」っていう言葉を最近聞いたり読んだりしたことがある人も結構いると思う。パリ協定は、この温度上昇をなんとか1.5℃までに抑えようっていう目標。これを国連の元に集う世界中の国々が一丸となって、掲げている。ただ、一丸となって掲げてはいるものの、掲げているだけ、もしくは、掲げながら、行動はカメさんのスピードの国が多い。日本はそのカメさん具合においては、トップグループに位置付けてしまっている。気候変動の原因である温室効果ガスの排出量で、世界第5位の日本。190カ国ほどある国の中で、第5位だ。日本がカメさんグループにいては、世界規模での解決に向けた努力の足を力強く引っ張ってしまっていることになる。
では、この状況の中で、「普通の人」である、私たちは何をすれば良いんだろう? 地球環境に大きな影響を及ぼす決断を下す政治家でも、企業のトップでもない、私たちにできることはなんなんだろう?
まず大事なのは、自分の家の電気を再生可能エネルギーに変えていくこと(パワーシフトキャンペーン)。これで私たち個人として排出している二酸化炭素がぐっと減らせる。気候変動の原因は、9割がた、電力をはじめとする「エネルギー」を化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃やして作り出していることが原因だから。
同時に、少し意外かもしれないけれど、自分の貯金先、銀行をしっかり選ぶこと。例えば、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行さんっていうのは、私たちにとってとっても馴染みの深い日本の大きな銀行だけれども、気候変動を加速させる事業を世界トップレベルで支援してしまっているという、ちょっと驚きで残念な状況がある。「買い物は、投票だ」って言葉もよく耳にするようになってきたけれど、銀行口座を地球に優しい銀行に移すこと(レッツ・ダイベスト!参照)でも、気候変動を悪化させる事業がこれ以上増えないように、自分からのメッセージを発信することができる。
そのほかにも、私たち個人のライフスタイルを気づいたところから、無理のない範囲でどんどんエコにしていくことは、もちろん大切。でも同時に大事なのが、それぞれの立場、お母さんだったり、農家さんだったり、コンビニでバイトしている人や、お孫さんが大好きなおじいちゃんだったり、自分の社会の中の立ち位置から、自分の人生のつながりを通して、自分「個人」よりもう一歩大きな輪に変化をもたらせないか、と考えてみること。例えば、自分の勤めている会社で、使い捨ての紙コップをやめよう、とか、小さな変化から働きかけて、その過程で、会社全体を再エネに切り替えたり、会社の銀行口座を変えたり、より大きなインパクトを与えられる変化に向けて一緒に動ける仲間を増やしていけたら素晴らしい。
そして、何より注目して欲しいのが、多くの環境団体や市民のグループが国レベルで、日本のエネルギーのあり方や、気候変動対策を求める活動をしている中で、多くの人にアクションへの参加を呼びかけていることがある。これが重要。署名だったり、SNSを使ったフォトアクションだったり、気候マーチへの参加だったり。有給を取らなくてはできないようなものから、食後の5分でチャチャっとできるものまで様々。こういったことにみんなが参加すれば、気候危機を止めたいと思っている人が今日本にどれだけいるかを政府や企業のトップの人たちに可視化していける。(こういった情報をキャッチしたい方は、ぜひ350 クルーに登録し、公式LINEにご参加を〜。)
インターネットの普及で世界中の情報に触れ、普通の人が気軽に飛行機に乗って世界を旅するグローバルな時代なのに、ある意味、現代を生きる私たちの多くにとって、自分の人生が他の人や地球と深くつながっている感覚が薄れていたんじゃないかと思う。私もその一人だった。でも、今コロナで、世界中の人々とこの地球という環境、そして自分の生活が連動しているのを痛感している人が多いと思う。気候変動も、そう。これから、気候変動と自分の人生のつながりを私たちが体感していくことは増えるはず。だから、この問題の大きさに、気づいた人から、できることから、学びと行動を繰り返して一緒に前進していくことがとても大切だと思う。
荒尾日南子/気候アクティビスト
市民の力で地球温暖化の解決を目指す国際環境NGO 350 Japanを始め独自の発信力で様々な気候危機に対する運動に参加。国際環境NGO 350 Japanのウェブサイトでは気候変動を食い止めるために脱炭素をはじめとした具体的な行動の奨励・指南をするコンテンツを発信したり、さまざまな環境団体とつながりながら政治的なアプローチを牽引している。
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